友人から聞いた話だ。その友人の同僚が、昼休みに立川まで行って、手ぶらで帰ってきたという。「売り切れてた」——それだけ言って、自分の席に静かに着いたらしい。合掌。

立川高島屋ショッピングセンターのガチャコーナーがやばいらしい、という話は前から聞いていた。でもその「やばさ」をリアルに感じたのは、友人からこの話を聞いたときだった。昼休みに往復する本気度、そして手ぶらという結果。立川のガチャ、そんなに甘くなかったらしい。

聞けば、朝の開店前から並んでいる人もいるという。入荷の掲示が出ると、昼休みに立川へ走り出す社会人がいるという。ガチャのために。大人が。本気で。……いや、わかる。わかるんだよ、その気持ち。

立川高島屋SC ガチャコーナーという磁場

目撃談①

朝、開店前から人が並んでいる

セールでもない。新作発表でもない。ガチャのために、開店前から並んでいる人がいる。これ最初に聞いたとき「えっ」てなったんだけど、よく考えると「そこまでさせる何かがある」ということで、むしろそのガチャへの信頼感が上がる気がしてきた。

並んでいる人たちは、何が入っているかわからないから来ているんじゃなくて、欲しいものが決まっていて来ている。ガチャのはずなのに、目的がめちゃくちゃ明確。狩りに来ている。

→ 「ガチャって何が出るかわからないのが楽しいんじゃないの?」という疑問はもっともだが、ハマった人間に「何が出るかわからない」は関係ない。欲しいものが決まっている。それだけだ。

目撃談②

「入荷しました」の掲示が、昼休みを支配する

入荷情報が掲示されると、昼休みに立川へ走り出す社会人が出る。往復の時間を考えると実際にガチャを回せる時間は数分もない。それでも行く。ランチより大事なものがある日というのが、人生にはある。

「行ってきます」の一言で消えて、戻ってきたときの顔で全部わかる。うれしそうなら出た、疲れた顔なら外れた、うなだれていたら売り切れだ。言葉より先に顔が全部しゃべっている。

→ 友人曰く、出かけた人が戻ってきたときの顔で結果が全部わかるという。職場のガチャ沼、なかなか深い。

目撃談③

手ぶらで帰ってきたという友人の同僚と、「売り切れてた」のひとこと

そして冒頭に戻る。友人の職場の話だ。昼休みに出かけた同僚が、手ぶらで帰ってきた。「売り切れてた」。ただそれだけ言って、席に着いたという。静かすぎてちょっと怖い。立川まで行ったのに、という重さが、その静けさに詰まっていたらしい。

目当ては「めじるし系」のガチャだったという。傘やペットボトルに付けるかわいいアレ。入荷掲示を見て即決断、昼休みに立川へ飛び出したのに、着いたときにはもうなかった。誰かが全部持っていった。

→ 人気があるから売り切れる、売り切れるから昼休みに走る、昼休みに走っても間に合わない——めじるし系ガチャの厳しい現実がそこにある。次の入荷を待て、見知らぬガチャ戦士よ。

✦ 大人のガチャあるある ✦
「昼休みに往復して、
手ぶらで帰ってくる。
それでも、また行く。」
── 立川を愛するガチャ沼の住人より

そもそも「めじるし系ガチャ」って何なの

知らない人のために説明しておくと、めじるし系ガチャとは、傘の柄やペットボトル、ポーチのファスナーなどに取り付けて「これ私のです」と主張できるようにするカプセルトイの総称だ。シリコンパーツやカニカン(留め具)がついていて、好きなところにぽちっとつけられる。キャラクターはサンリオ、ディズニー、アニメ系など種類が豊富で、見た目がとにかくかわいい。

つまりどういうことかというと、普段から気軽に使えるかわいいアイテムがガチャから出てくる、ということだ。デスクに飾るだけじゃなくて、明日から自分の傘についてたり、ポーチのファスナーになってたりする。それがなんかいいんですよね。毎日持ち歩くものがかわいくなる、しかも500円以下で。

特にビニール傘への装着は鉄板。傘立てに同じ傘が10本並んでいても、めじるし系がついていれば即わかる。「あ、これ私のだ」が一瞬でわかる。しかも見た目がかわいいので、傘を取り出すたびにちょっとうれしい。一個つけると「もう一個違うキャラも……」という気持ちが自然に湧いてくる。気づいたら傘がにぎやかになっている。それがめじるし系ガチャという沼だ。

COLUMN / 大人がめじるし系に走る理由、考えてみた

よく考えると、めじるし系ガチャに一番ハマるのって子どもより社会人かもしれない。毎日ビニール傘を持ち歩いて傘立てに突っ込んで「どれが自分のかわからん問題」が発生してるの、だいたい大人の方だから。

かわいくて、使えて、ガチャだから安い。しかも何が出るかはわからない。昼休みに立川まで走る理由として、これで十分すぎる。うなだれて帰ってきたという友人の同僚の気持ち、完全にわかってきた。

立川という街と、ガチャ文化

立川は、ガチャが盛り上がりやすい街の条件がそろっている。駅前に大型SCがあって、多摩エリアから人が集まりやすくて、平日も週末も人の流れが絶えない。だから入荷しても早く売り切れる、だから開店前から並ぶ人が出る、だから昼休みに走っても間に合わないことがある。立川のガチャコーナーが熱いのは、それだけ本気の人が多いからだ。

友人の同僚は今日も次の入荷を待ちながら仕事をしているらしい。入荷情報が出たら、また昼休みに走るのだろう。今度こそ間に合うといい——と、面識もないのにちょっと応援している。傘、かわいくなるといいね。

✦ 手ぶらで帰っても、また行く。それがガチャ沼

大人がガチャに本気になる瞬間は、子どものそれとちょっと違う温度がある。狙っているものがあって、情報を集めて、昼休みに走って、それでも間に合わないことがある。

でも、また行く。次こそは、と思いながら。立川のガチャコーナーは今日も、そういう本気の人たちをにこにこ引きつけている。